オリンピックスポーツ文化研究所 お知らせ

お知らせ 2025.10.15 『オリンピックスポーツ文化研究』第10号を刊行しました

第10号は、特集論文が1本、原著論文が6本、研究資料が1本、研究ノートが5本、プロジェクト報告が4本、オリンピアン・パラリンピアンの記録が2本で構成されています。
特集論文は、「オリンピックスポーツ文化研究所のこれまでとこれから」をテーマとして設定し、研究所初代所長の谷釜了正先生よりご寄稿をいただきました。長年にわたり日本の体育・スポーツ史研究を牽引され、本学の100年史編纂を主導された谷釜先生には、近代オリンピック史を、本学の動向をも絡めながら壮大なスケールで論じていただきました。
関口・福井論文は、僅か29歳という若さで戦場に散った、本学の戦没オリンピアン・有本彦六先生のライフヒストリーを描き出しています。本論文は1年半にわたって進められたプロジェクト1の成果です。この取り組みをきっかけに、2025年度より、プロジェクト1の一環として「戦没同窓生名簿の作成」をスタートさせた事実を、研究所の歴史の大切な1ページとして記しておきたいと思います。冨田・近藤論文は、第24回オリンピック競技大会の名古屋招致を取り上げた2作目で、招致に対する日本国内の協力体制を浮かび上がらせることに成功しています。金田論文は、あまり知られていない陸上競技の予備予選制度に注目し、競技参加と競技力に与えた影響を考察しています。亀山論文は、先行研究の多くが「復興五輪」を政府あるいは大会組織委員会などによる取り組みやメディア報道に着目して論じているのに対し、聖火リレーに焦点を当てています。堀ほか論文、相川ほか論文は、いずれも、本学と北海道幕別町との連携協定事業の成果をまとめています。
2024年夏には、フランス・パリにおいてオリンピック・パラリンピック競技大会が開催され、48名もの本学学生や同窓生が私たちにたくさんの勇気と感動を与えてくれました。本号には、同大会で活躍されたパラリンピアンの辻沙絵氏と福永凌太氏の詳細なライフヒストリーが掲載されています。スポーツ史を専門とするプロジェクトメンバーのインタビューをもとにしたこの記録からは、お二人がパラリンピックという夢の舞台で見たり聞いたり感じたりした、まさに生きた経験や、それぞれがお考えになるスポーツの魅力が読み取れるのではないでしょうか。
戦後80年目を迎えた今、世界では未だ戦争や暴力が後を絶ちません。しかし、だからといって、私たち日本体育大学オリンピックスポーツ文化研究所が、世界平和を希求するオリンピックムーブメントを放棄することは決してありません。研究所は、オリンピックを中心とした本学の歴史の構築及びその継承と、オリンピックをはじめとしたスポーツ文化に関する研究の両方に邁進することを通して、世界平和の実現に貢献することを改めて表明いたします。
最後になりますが、本号にご寄稿いただいた皆様、審査にご協力いただいた皆様に心より感謝申し上げます。誠にありがとうございました。

オリンピックスポーツ文化研究所 所長
依田 充代